レースのカーテン越しに朝日がさしこんでくる。
亜紀はそのまぶしさで目覚めた。
次第に覚醒してくる意識の中で、自分の部屋ではないことに気がついた。
昨夜はショットバーで飲んでから、直樹の部屋に寄ったのだった。
ベッドサイドのテーブルには飲みかけのワイン。
グラスの中には桃の花びらが浮いていた。
キッチンの方から珈琲の香りが漂ってきた。
「おはよう、亜紀」
「ハッピー・バースデー」
直樹は珈琲をいれる手をとめて亜紀に声をかけた。
春まだ浅い三月。つぼみをつけた桜の枝が窓の外で揺れていた。
これってすごく幸せな瞬間かもしれない。百回のキスよりも。
シーツの感触を確かめながら、亜紀はふとそう思った。