April 06, 2004

シーツ

「そろそろ寝具屋さんに行こ」

サクミの言葉で僕は次の季節が来たことを知る。
今は黄色のシーツ。
何度も洗ってクリーム色に近くなっているのは、
それだけ僕たちが愛しあったからだ。
次は当然若草色だろうという僕の予測ははずれた。

3月には菜の花色のシーツ、4月には新緑色のシーツ。
こうして華やいだ自然の上で動物になることが、
この3年間つづいてきたことなのに。

「今年は白にしましょう」

“白・・?
 僕がどんな想いをしてサクミといっしょになったと思ってる?”

なぜ白でこんなにざわめくのか。
僕たちがあらゆるものを裏切って生活を共にしたとき、
毎日毎日白い菊がアパートに送られてきた。
そのときサクミが「白はタブーな色ね」と泣いた。
それ以来、白は禁句にさえなっていたのだ。
その白を次のシーツの色に・・?

僕はよほど切羽詰った顔をしていたらしい。
「シュウ? どうしたの?」
冷たい手で頬に触れられて、我に返った。
「だって、白って・・」

サクミが、“あぁ”という表情になった。

「だからこそ白を使いたいの。もう、白解禁にしよう?
 白いシーツを巻いてウエディングドレスごっこしよ?」

そういえば、僕たちの生活には、色のあるものしか存在しない。
白いお皿も1枚もないし、白いカップもひとつもない。

「白いシーツを買おう。
 それと、ごっこじゃなくて、
 ほんとのウエディングドレス着せてあげるよ」

ここはデパートの寝具売り場だというのに、
僕は思いきりサクミを抱きしめた。

でも僕にとっての“白”はサクミなのだと、
どんな色もサクミの前では褪せてしまうのだと、
今夜、白いシーツの上で告げるつもりだ。

Posted by hikari at April 6, 2004 01:20 AM | TrackBack
Comments
Post a comment









Remember personal info?