「そろそろ寝具屋さんに行こ」
サクミの言葉で僕は次の季節が来たことを知る。
今は黄色のシーツ。
何度も洗ってクリーム色に近くなっているのは、
それだけ僕たちが愛しあったからだ。
次は当然若草色だろうという僕の予測ははずれた。
3月には菜の花色のシーツ、4月には新緑色のシーツ。
こうして華やいだ自然の上で動物になることが、
この3年間つづいてきたことなのに。
「今年は白にしましょう」
“白・・?
僕がどんな想いをしてサクミといっしょになったと思ってる?”
なぜ白でこんなにざわめくのか。
僕たちがあらゆるものを裏切って生活を共にしたとき、
毎日毎日白い菊がアパートに送られてきた。
そのときサクミが「白はタブーな色ね」と泣いた。
それ以来、白は禁句にさえなっていたのだ。
その白を次のシーツの色に・・?
僕はよほど切羽詰った顔をしていたらしい。
「シュウ? どうしたの?」
冷たい手で頬に触れられて、我に返った。
「だって、白って・・」
サクミが、“あぁ”という表情になった。
「だからこそ白を使いたいの。もう、白解禁にしよう?
白いシーツを巻いてウエディングドレスごっこしよ?」
そういえば、僕たちの生活には、色のあるものしか存在しない。
白いお皿も1枚もないし、白いカップもひとつもない。
「白いシーツを買おう。
それと、ごっこじゃなくて、
ほんとのウエディングドレス着せてあげるよ」
ここはデパートの寝具売り場だというのに、
僕は思いきりサクミを抱きしめた。
でも僕にとっての“白”はサクミなのだと、
どんな色もサクミの前では褪せてしまうのだと、
今夜、白いシーツの上で告げるつもりだ。