March 14, 2004

誕生日の朝

レースのカーテン越しに朝日がさしこんでくる。
亜紀はそのまぶしさで目覚めた。
次第に覚醒してくる意識の中で、自分の部屋ではないことに気がついた。
昨夜はショットバーで飲んでから、直樹の部屋に寄ったのだった。
ベッドサイドのテーブルには飲みかけのワイン。
グラスの中には桃の花びらが浮いていた。

キッチンの方から珈琲の香りが漂ってきた。

「おはよう、亜紀」
「ハッピー・バースデー」

直樹は珈琲をいれる手をとめて亜紀に声をかけた。
春まだ浅い三月。つぼみをつけた桜の枝が窓の外で揺れていた。

これってすごく幸せな瞬間かもしれない。百回のキスよりも。
シーツの感触を確かめながら、亜紀はふとそう思った。

Posted by kage at 12:03 PM | Comments (0) | TrackBack

March 07, 2004

ねがい

あなたの胸に倒れたく
櫻になっていいですか

今宵かたちとなることが許されるなら
はなびらいちまい そのゆびで
そっと枝から引きぬいて

Posted by hikari at 09:37 PM | Comments (0) | TrackBack

さくら

駅のポスターの中で満開の桜がゆれていた。
あなたがいつか見たいと言った高遠の桜だった。
押し流されてゆく人波の中でそこだけが艶やかだった。
日常のうねりに身をまかせているうちに、また桜の季節が巡ってきた。

墓守の女将が言う。

「桜の花を見て旅立つ人は幸せですよ」

「西行ですか」

女将は少しはにかむように微笑んだ。

僕は向きなおって花を捧げた。
春、彼岸。どこかで子供の声がした。

Posted by kage at 11:30 AM | Comments (0) | TrackBack